(2)ハレンチな日本語教師、海を渡る
機内に入ると、スパイスと独特の香ばしい体臭が混ざり合った臭いが鼻を突いた。
先程出国手続きを終えたばかりだが、ワキガのインド人が10人集まれば嗅覚だけでインドへ入国した様な気分を味わえるらしい。
本当はANAかJAL、乗継便でも良いのでシンガポール航空で赴任したかったのだが
校長から「最安値、最短の航空券を選択すること」とお達しがあったため、インドの国営航空会社Air Indiaを選択する羽目になった。
このAir Indiaは、過去に機内食にゴキブリが混入していた事で乗客がパニックになり、CAに対して機内食を投げ付ける騒ぎを起こしたことがある最低の航空会社だ。
遅延は当たり前、座席も狭く、CAは腹の出た年増女。その年増が腹を出してサリーを着ているものだから、手荷物を頭上荷物入れに収納する際に汗でネチネチした肉饅頭で私の頬を圧迫したことがあった。
そんな思い二度としたくないとおもい、今回は事前に中央座席を予約していた。
意気揚々と席に向かうと、私の座席左右には、どうやったらそんなに太れるのかと聞きたくなる様な肥満の40代男性2名が無理矢理肉饅頭を座席に詰めこみ、大人しく着席していた。
どうやら私の空の旅に肉饅頭はつきものらしい。
最悪なことに、右の肉饅頭が尋常ではないワキガ臭を患っていた為、9時間ずっと口呼吸を強いられた。
インド空港に到着すると、校長が待ちかまえていた。
社宅へと向かう車内で告げられた衝撃の事実。
赴任2週間前に女性教師の1名が生徒と恋愛関係にあり、退職したことは知らされていたのだが詳細がえげつないものだった。
・社宅のベランダで青姦、喘ぎ声が大きすぎて住民に見られて大騒ぎ
・教室で生徒カップルとスワッピング
・妊娠疑惑で緊急帰国
私はそのハレンチ教師の後任としてどうやらこの学校での新生活をスタートするらしい。
そして、新・社宅ルールが制定されていた。
・基本門限19時
・19時以降外出する場合は、誰とどこに行くかを校長に申請
・申請した場合でも21時が最終門限
私は日中、淫乱教師の後釜として性の対象として見られながら教鞭を執り
夜は聖女の様に家に身を潜めることになったのだ。
窓から吹き込む熱風で干物の様な形相で話を聞きながら
ワキガ饅頭によって9時間口呼吸を強いられた私は
そんなことより一刻も早く水が飲みたかった。